転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


595 ゴブリンが20匹もいたのは変なんだって



 それから僕たちはベニオウの木を何本か回って、いつもよりもいっぱいベニオウの実を採ってったんだよ。

「バリアンさん、流石にこれだけ採ればもう大丈夫だよな」

「ええ。正直採りすぎなんじゃないかというくらい採りましたから」

 そしたらさお父さんとバリアンさんがこれだけあればもう十分だよって言ったもんだから、僕たちはイーノックカウの町に帰る事にしたんだ。

「ねぇ、お父さん。帰りは、何にもなかったね」

「まぁ、行きのようにゴブリンの群れに当たる方が珍しいからな」

 この森に来てからベニオウの木が生えてるとこに行くまでは、ブレードスワローとかを狩ったり途中であったゴブリンをやっつけたりしたでしょ?

 でも帰りは森を出るまで特に何にも起こらなかったもんだから、僕たちはそのまま冒険者ギルドまで帰ってきたんだ。

「ただいま! あっルルモアさん、僕たち帰って来たよ」

 ギルドの入口を開けて中に入ると、いつものカウンターのとこにルルモアさんが居たんだよね。

 だから僕、タッタッタッて走ってって、ルルモアさんにただいまのご挨拶をしたんだ。

「あら、おかえりなさい。ベニオウの実はいっぱい採れた?」

「うん! いっぱい採れたよ」

 そしたらベニオウの実はいっぱい採れた? って聞いてきたから、僕はバリアンさんに早くこっちに来てって言ったんだよ。

 だって採ってきたベニオウの実はマジックバッグに入ってるんだもん。

 だからそれを持ってるバリアンさんが来ないと、ルルモアさんに採ってきたベニオウの実が見せられないからね。

「ああ、バリアンさん。ベニオウの実はこちらでは出さないでくださいね」

 なのにルルモアさん、何でか知らないけどバリアンさんにベニオウの実は出さないでって言うんだもん。

 だから僕、何で? って聞いたんだよ。

「え〜、なんで? せっかく採ってきた実を見せてあげようと思ったのに」

「それはうれしいのだけれど、森の奥で採ってきたベニオウの実はとっても柔らかいでしょ? でもここにはその実を傷つけずに置いておく設備が無いもの」

 そっか、森で採った時と違って、ここには柔らかい干し草なんてないもんね。

 ルルモアさんの言う通り置くとこが無いんだから、ここで出しちゃうのはダメかも。

「でも、ルディーン君の様子を見れば、いっぱい採ってきてくれたというのは解ったわ。ありがとうね、ルディーン君」

「えへへっ」

 ホントはルルモアさんにいっぱい採って来たベニオウの実を見せたかったけど、ありがとうって言ってくれたから僕はそれだけでとっても嬉しくなっちゃったんだ。



「ところで、カールフェルトさん。今回はニコラさんたちに弓を使った狩りを体験させて頂けるとの事でしたが、問題なく行きましたでしょうか?」

「ああ、それに関しては皆、うまく立ち回れていたぞ」

 ニコラさんたち、初めての弓での狩りだからいっぱい失敗しちゃってたけど、それでも1匹ずつくらいは狩れたでしょ。

 だからお父さんは、そっちは何の問題も無かったよって。

 でもね、それとは別に、一つ気になった事があるんだよって言うんだよね。

「気になった事ですか?」

「ああ。実はベニオウの実を採るために森の奥へと分け入ったんだが、その途中で20匹ほどのゴブリンの群れに出くわしたんだ」

 お父さんはね、僕たちが森でやっつけたゴブリンのお話をし始めたんだよ。

「ゴブリンは単独で行動する事はまず無いから、複数と出くわすのが普通だ。だが、それでも通常は3匹ほど、多くても6匹くらいで行動するものだろ?」

「この話は帰りの道すがら話していたんだが、カールフェルトさんは20匹もの群れが一緒に行動していたのは少しおかしくないかって言うんだよ」

「確かに、言われてみればその通りですね」

 ゴブリンって、体がちっちゃくって弱ちい亜人でしょ?

 だから動物とかに襲われないように、1匹でいる事は殆ど無いんだって。

 でもさ、あんまりいっぱいいると、仮に着た冒険者さんに見つかりやすくなっちゃうでしょ。

 だから一度に20匹も一緒に居たのはおかしいんじゃないかって、お父さんは言うんだよ。

「俺としては出くわしたのは森の奥の方だから、強い魔物に出くわした時の事を考えて固まっていたんじゃないかって言ったんだが、カールフェルトさんは納得しなくてな」

「それはそうだろ。冒険者が相手ならともかく、肉食の魔物相手じゃ数がいたところであまり意味は無いからな」

 弱ちいゴブリンでも、普通の冒険者さだったら一人に3匹くらいでかかってけば勝つ事ができるでしょ?

 だから数がいっぱいいたらそれだけ有利なんだけど、あんな森の奥の方だとすごく強い冒険者さんしか来ないし、数も4人以上で行動するから20匹居ても簡単にやっつけられちゃうんだよね。

 それに相手が肉食の魔物だったらゴブリンじゃいっぱい居てもかなわないから、どっちかって言うと見つからないように少しの数で動いた方が安全なんじゃないかなぁってお父さんは言うんだよ。

「今回、狩りのために獲物を探している訳でも無いのに、俺がちらっと見ただけで簡単に痕跡を見つけられたのは数が多かったからだ」

「そう言えば、あの時はもう今日の狩りは終わりにしてベニオウの実を採りに行く途中でしたね」

「ああ。いくら亜人であるゴブリンが痕跡を隠しながら移動するとは言っても、数が多ければどうしてもその痕跡も大きくなるからな」

 どう考えても20匹は多すぎだろうって言うお父さん。

 それにね、おかしいのは今回だけじゃないんだって。

「後、ニコラちゃんたちが襲われた時の話もそうだ。女性ばかりのパーティだったから6匹ほどのゴブリンに奇襲されたのかと思っていたんだが、聞いてみたら10匹ほどの群れだったというじゃないか」

 ニコラさんたちって、隠れてたゴブリンに気付かなかったもんだから、最初にアマリアさんとユリアナさんがおっきなケガをしちゃったでしょ。

 お父さんはそれを知ってたから、その時は6匹くらいのゴブリンに襲われたんだろうなぁっと思ってたそうなんだよ。

 なのにさっきお話を聞いたら、10匹くらいいたって言うんだもん。

 ニコラさんたちが入っていけるくらいのとこに、ゴブリンが10匹もいたのは流石におかしいよねってお父さんは言うんだ。

「なぁ、ルルモアさん。もしかすると、どこかにゴブリンの集落ができているんじゃないのか?」

「集落ですか!?」

 ゴブリンは弱ちいから、ちょっとの群れで生活してるだけだったらそれほど怖くないんだよ。

 でも他の亜人よりも増えるのがすっごく早いから、もし村なんかできてたら大変な事になっちゃうじゃないですかってルルモアさんは言うんだ。

「至急、ギルドマスターの報告してきます」

「ああ、そうしてくれ。ニコラちゃんたちが襲われてから結構な時間が経っているからな。急がないと手遅れになるかもしれない」

 お父さんのお話を聞いて、大慌てでギルドの階段を上がってくルルモアさん。

 それをちょっと怖いお顔で見送ってたお父さんを見たお母さんは、ちょっとあきれたお顔でこう言ったんだよ。

「ハンス、ちょっと脅かしすぎよ。いくら集落ができていたとしてもこの森の魔力濃度じゃ上位種は生まれないから、せいぜい100匹前後がいる程度じゃないの」

「いやいや。たとえその程度の集落だったとしても、この街の冒険者だと手に負えないんじゃないか?」

「あのギルマスがいるのに、本当にそう思う?」

 お母さんにそう言われて、あっそうかってお顔になるお父さん。

「それにあのルルモアさんの慌てようからすると、ギルマスの事だからきっとこれ幸いと私たちに依頼を振ってくるわよ」

 お母さんはね、明日には村に帰るつもりだったのになぁって、おっきなため息をついたんだよ。



 読んで頂いてありがとうございます。

 口は禍の元、藪をつついて蛇を出す。

 注意喚起のつもりが、また厄介ごとが降りかかって来そうな気配ですね。

 さて、今週なのですが、泊りでの出張が入っているので次話を書く時間がありません。

 なので申し訳ありませんが金曜日はお休みさせて頂き、次回は来週の月曜日更新となります。


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